こんにちは、スローフード学び中のきょうじゅです。
ローマへのマクドナルド出店を機に「スローフード協会」が初めて設立された国イタリア。
スローフードの歴史や変遷がある中で、イタリアという国自体がスローなのか?それはなぜなのか?という疑問が湧いてきませんか?
今回は、イタリアでスローフードが誕生した背景と、国民性についてお伝えしたいと思います。参考書籍は、島村奈津さんの「スローフードな人生! …イタリアの食卓から始まる」です。
この本を読むと、何だか不思議とイタリアワインやイタリア食材を楽しみたくなってしまう不思議な魅力があります。
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エスプレッソがなければ始まらない
まずは、イタリアのバール(バー)をご紹介します。
英語で書くと「bar」なのですが、イタリアのバールの場合は飲み屋と喫茶店の合わせ技のような場所です。静かに飲む場所ではなく、みなで雑談しながら飲み物を楽しむ場所というイメージです。
イタリア人が好きな飲み物と言えばエスプレッソコーヒー。
イタリアでは、バールのエスプレッソの値段が法律で定められています。
カウンターで立ち飲みする分には、エスプレッソは約1ユーロ(約140円)です。
値段が決められているということは、ブルーマウンテンのような高級な豆は使えません。
となると、勝負どころは焙煎の仕方と入れ方です。
なので、イタリアのバールでは、バリスタがコーヒーを入れる手元がわざと見えないように工夫されています。
エスプレッソの語源は「Express」、特急という意味なので、スローフードとは真逆にあるように思えます。実際に、イタリアでは朝の通勤時間や昼食後にバールで一杯のエスプレッソを5分くらいで平らげて消えていくようです。
そんなイタリアのバールですが、実はカフェの注文方法が200はあるそうです。例えば
・カフェラテ、ラテマキアート、カプチーノ、といった種類に加え
・エスプレッソをダブルでね、でも、水を別につけといてくれる
みたいな注文を一人一人するとのこと。
普通のカフェチェーン店では、これだけの種類の注文をこなすことはほぼ不可能ですよね。
そう考えると、イタリアのバールはスローフード側にいるようです。
「スローフードな人生!」では、スローフードの性格が強いバールの条件は
・ひとつ、スローバールでは、ありとあらゆる多様な注文が可能である。
・ふたつ、スローバールには、会話があり、人と人の交流がある。
・みっつ、スローバールでは、そこで働く人々の個性が輝いている
「スローフードな人生」p83より抜粋
の3つと紹介されています。
自分の好みの淹れ方を注文でき、日常の忙しさから離れた場所で会話をしながら、バリスタのキビキビ働く姿があるイタリアのバール。昼はエスプレッソで、夜にはワインやぐらっぱのようなお酒も楽しめる場所。
そんなイタリアのバールで自分だけのエスプレッソを飲んでみたくなりませんか?
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イタリアワインの質向上にかける想い
ワインがお好きな方は、イタリアワインといえば「バローロ」を思いつくのではないでしょうか?イタリア北西部にあるピエモンテ州のバローロ村周辺の地域で、ネッビオーロという葡萄から作られる高級な赤ワインです。
そんな高級イタリアワインは、実は「高級」と言われるようになったはほんの数十年前からです。戦後の不況と共に貧困化が進み、1950年代から70年代にかけて、バローロは品質低下による評価を落とすことになりました。
ワイン生産者たちは次々に故郷を離れ、フィアットの自動車工場やアルバのチョコレート工場で働いていました。
そんな状況で、一人の青年がイタリアワイン復興を図るべく、フランスのブルゴーニュへワイン修行に行きます。
ブルゴーニュでは、誰もが葡萄の生産量ではなく、質の向上に努めていました。フランスでは200年間もワインの質改善を続けていました。
戦争に負けたイタリアは、国全体がゼロから這い上がろうとしており、質のことを指摘する人はほとんどおらず、バローロでは、1970年代になっても化学肥料が使われ、量産体制が取られていました。
また、ワインの樽についても、バローロでは古い大樽を何年も使い続けていましたが、ブルゴーニュでは数年おきに替えられていました。
1978年に帰国したイタリアのこの青年は、化学肥料を使うのをやめた。
古い樽はチェーンソーで切りつけ、新しいものを導入した。
葡萄の枝の剪定も始めた。
結果、生産の手間は以前の何倍にも増えた。
この努力を継続した結果が、現在のバローロの味・評価につながっています。
最後に、「スローフードな人生!」では、イタリアのワイン醸造家のコメントとして、
偉大なワインは、決して一人なんかでは飲まないだろう。ワインがあれば、世界中で会話が生まれる。
という言葉が紹介されています。
バールで仲間とわいわい話しながらワインを飲むイメージで湧いてきます。
これを見ると、イタリアワインもフローフードのひとつなのだなと思いませんか?
迫りくる均質化の波
ご存じの通り、至りは欧州連合(EU)の加盟国です。
アメリカやアジアに対抗できる経済力を誇久る、人口3億4千万人の単一自由市場。
政治や経済については共通の枠組みを設ける一方、文化的には多様性を重視することがEU設立当初の趣旨でした。
一方で、EUの誕生は必然的に均質化の勢いを増す方向に動きます。
国境を超えるための様々な手続きが不要になると、ファストフードのチェーン展開が進み、食のグローバル化・均質化に拍車がかかりました。
フローフード協会会長のカルロ氏が、協会のある大会で以下のような演説をしています。
今、イタリアで目にあまるものを挙げるとすれば、それは安値の罠です。
工業化による大量生産のシステムを悪だなどとは言わない。
ただ、それらが生む危険性についてはほとんど論じられることはなく、イタリアの消費者は盲目的に安値に飛びつく。(中略)
70年当時、イタリアの過程がかけた金額を百だとすれば、96年には実にその7割にまで減少しているのです。残りの3割は、ブランドの服や電化製品に消えたのです。
これを100とは言いませんが、せめて8割か、9割くらいまで頑張って戻そうではありませんか。
そして、そのお金で、ただの売り文句ではなく、本当に安全で、美味しいものを提供してくれる人々を支えましょう。
スローフード宣言! p253より抜粋
この演説はイタリアについてですが、2023年の日本も似たような状況ではないでしょうか?
安さに飛びつき、何を食べたか翌日には忘れてしまうような食事の時間を続けることで本当に良いのでしょうか? もちろん、日によっては食事にゆっくりと時間をかけられない日もあるでしょう。
大事なのは、「食事」という時間と機会を大事にとらえられる心の余裕なのだと思います。
その余裕が持てない生活を続けることが、自分の人生で良いのか?私はそんな人生は送りたくないなと思います。
島村菜津さんの「スローフードな人生!」は、まだ行ったことのないイタリアの食生活と、それを支えるイタリア人の食に対するこだわりと危機感を感じ取れる貴重な一冊でした。
今後、イタリアの食材やワインに触れるたびに、この本とイタリアのスローフードについて思い出すことが出来そうです。
至極の味わいで、至福のひとときをもたらす『blissful coffee』。
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