こんにちは、スローフード学び中のきょうじゅです。
今回は、スローフードをより深く理解するための書籍紹介です。
私がスローフードに興味を持つきっかけとなった、アリス・ウォーターさんの「スローフード宣言 ~食べることは生きること~」です
本書の要点
・スローフードは「どう食べるか」「どう生きるか」を考えること
・生物としての私たちが内包する美しさを食べ物の中に見出すことで人生は変わる
・旬の食べ物を頂き、「今ここ」を感じながら、土地のことを思いやり大切にする
・シンプルを大事にして、本質を愛する
著者:アリス・ウォータースさんとは?
著者はアメリカで最も予約が取れないと言われるレストラン「シェ・パニース」のオーナーです。世界中にスローフードを普及させている料理人でもあります。
フローフード以外は認めない、という考え方ではなく、デジタルセンサーや技術を用いた品種改良による食料問題解決に肯定的であるなど、バランス感覚をお持ちの方でもあります。
この本の日本語訳を出版するにあたり、様々な出版社からオファーがあったそうです。
その中で、アリスさんが選んだのは大手出版社ではなく、島根県の隠岐諸島の一つ「海士町(あまちょう)」にある小さな出版社「海士の風」でした。
海士の風さんは1年間に3冊しか出版しないと決めています。心から共感し、応援したい著者を支援する姿勢は、スローフードに通じるものがあります。
「ファストフード文化」vs「スローフード文化」
この書籍は、目次の段階から「ファストフード文化」「スローフード文化」に大別した構成になっています。
ファストフード文化
・便利であること
・いつでも同じ
・あるのがあたりまえ
・広告への信頼
・安さが一番
・多いほどいい
・スピード
スローフード文化
・美しさ
・生物多様性
・季節を感じること
・預かる責任
・働く喜び
・シンプルであること
・生かしあうつながり
この目次構成を見ると、ファストフード vs スローフードという二項対立を前面に押し出すイメージを抱いてしまいますが、著者のアリスさんは「ファストフードのままで本当に良いのだろうか?」という問いを私たちに投げかけてくれています。
決してスローフードを押し付ける雰囲気ではありません。
スローフードを選択するか否かは、私たち一人一人が考えて決めるべき生き方の選択であると思います。
工業化された農業
本書では、ファストフードを代表とする表現として「工業化された農業」がたびたび登場します。
アメリカでは、毎日8,500万人がファストフード店で食事をしているそうです。
アリスさんは、マクドナルドやピザチェーン店のような食事だけをファストフードというのではなく、
農薬や除草剤を使い、大量生産され、添加物や保存料で加工された食べ物
の全てをファストフードと捉えています。
ファストフードは「いつでも」「安価で」「同じ味」を実現してます。
なぜ、これらを実現できているのか?
産業化された食のシステムは、効率のいい流れを滞らせないように「いつでも同じ」を追求します。遺伝子組み換えがなされ、ロボットで農薬を散布し、機械で収穫されるようになりました。
果物は輸送中に追熟させられ、風味が豊かにならない。
こうした結果、単一作物栽培が進み、単一栽培品種以外の作物を育てることが難しくなります。
作物の多様性がなくなれば、主要作物が育たなかったときには世界の食料供給もリスクにさらされます。
人は半世紀もの間、作物の味や栄養価よりも輸送の利便性を優先してきたのです。
そして、わたしたちはゆっくりとその状態に慣れ、それが当たり前であるかのように受け止めるようになりました。
スローフードとエディブル教育
フランスに留学経験があるアリスさんは、フランス人の買い物のしかた、料理のしかた、食べ方に惚れ込みました。長い時間のかかる毎日の習慣と儀式が、おいしい食事と意味のある人生をはぐくんでいる、そんな様子を見て、もっとゆっくり、もっと地に足の着いた暮らしを目指すようになりました。
一方、アメリカに戻ると、ファストフード文化が急速に成長していました。
もぎたての旬の果物と野菜が並ぶ路上市場もなければ、素晴らしい食べ物と雰囲気を携えた小さなカフェやレストランもない。
フランスで得た食の美しさの世界と価値観をつながり続けるべく、地産地消の食材を利用したレストラン「シェ・パニース」を始めます。
アリスさんの食材に関するエピソードとして象徴的な表現を書籍から引用します。
「いちばん好きなトマトは何ですか?」
「8月の暑い盛り、カリフォルニアのポープ・バレーの東にあるグリーンアンドレッド農園が乾地農法で育てたアーリーガールトマト」です。
「スローフード宣言」より
一番好きな品種を問われるとき、それがどこで育ち、どう世話され、いつ収穫されたかに触れないわけにはいかないそうです。
アリスさんの活動は、ご自身のレストランに留まりません。
子どもが学校で食について何を学び、何を学んでいないのかを見て、「可能性は学校にある」と思い至るようになりました。
その後、地元バークレーにある公立中学校の校長先生に「エディブル・スクールヤード(子どもが手を動かして五感で学ぶための食育菜園)をはじめましょう」と交渉します。
エディブル教育は、食育菜園をつくり、菜園を学びの場(教室)に変え、子どもたちのこころと手(体)、頭(考える)取り組みがなされています。
現在、エディブル・スクールヤードは7,000以上の教育プログラムがオンラインで公開され、世界中の学校やその他教育機関で実施されています。
アリスさんは「美味しい革命―アリス・ウォータースと〈シェ・パニース〉の人びと」という書籍も出版されています。今度はこちらも一緒に読んでみませんか?
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